進化する猫 🐈

猫も進化する‥それだけのことなんですニャ~ン😹

箱伝説/舌切雀㋺

太宰治御伽草子を借りて自伝「舌切雀」を書いたと私は理解している。子供は母親に甘えるなかで育つものだが、私の物心がついた時分を思い浮べてみても母親に思う存分に甘える私の存在が認められる。もちろん、良いとこのボンと貧乏人の小倅とでは育った環境が大きく異なって感じられても仕方ない。その差を乗りこえるには或る訓練が必要なようだが、それはここでは置いておいてお噺を先へ進めることにしたい。

母乳の味を知らない点で太宰と私は変らないが、病弱な母親の乳よりは頑健な乳母の乳のほうが大量に出るし、栄養分も申し分ないだろう。そんな乳母を得た乳児は一般世間の児より元気にすくすく育つ条件が満たされたことになる。その幼い太宰に世話係がついて飽きさせないよう・不自由しないように相手をしてくれる。それで幸せな幼児期を過ごせたなら幸せには違いない。幸せな太宰の幼児期の記憶は竹(たけ)の藪の夢!

太宰のタケ藪には宝物がいっぱい詰まっていた。タケ(竹)は決して荒らされてはならない地なのです。夢のタケ藪に入るには一定の儀式があって、それは横になって寝そべって目を閉じること。幼い頃の私も寝そべって目を閉じて幸せの入り口をくぐった記憶があるから、太宰の気持ちをよく理解できる。ところが目を覚ましたときタケが無くなってたらどうしよう。竹藪やあい、タケは何処だあって探しまわることになる。

私の場合はタケでなくて母親だったが、大概の幼児にとって母親は居なくてはならない大切な大切な存在です。それが太宰に於いては竹であり・竹藪だったし⋯お噺「舌切雀」なのです。竹藪に棲んでる子雀が幼い太宰をなぐさめ・楽しく遊んでくれた。その大切な竹藪の小雀を蔑ろにする者はそれが誰であっても許せるものではない。己を受入れてくれる存在が雀であれ・竹藪であれ・オバケであれ⋯幼児には大切なんだ。

太宰はどう考えていたか知らないが、人間は20才になっても・60才になっても・生きているかぎり己を受入れてくれる存在が必要だ。それ無しに人は人間性を保てない。(私は)他者の人間性を損なわせ失わせてはならない⋯そのために人間は長い長い乳幼児期を勝ち取り・遺伝子に組みこんできたのでないかな。大きくなっても人間性が育っていないのは当人だけの責任でも問題でもない。だったら私の責任を知るべきとなる。

竹藪のどの葛籠(つづら)にも金貨が詰まっていることを太宰は知っていた。だがそれは理屈です。どんな財宝も理屈であれば役に立たないってことをあなたはご存知だろうか?理屈の人は貧しい。理屈でないと言うのなら財宝を役立てればいいだけのこと。だからあなたは理屈と事実の違いをご存知だろうか?太宰は・理屈の人は、財宝を役立てない故に貧しい。貧しさゆえに家族とも知人とも憎みあったり傷つけあったりする。

ともあれ、太宰治・作「舌切雀」からこんなに素晴らしい結論を導きだせたことに私は法外の悦びを感じている。だから私は太宰治に感謝できるのです。(管理人)